Vol.1 田中崇行君
田中っちは大学時代の親友。一番仲が良かった同級生だ。
大学ではたくさん友達ができたけど、なぜか彼が一番、近い
仲になった。同じ学科で同じ寮生活。たしかバレー部で、水泳
もしていた。
彼の最もすごい武勇伝は、卒業間近にバイクで大事故を起こ
して、右腕ギブス状態になった。右手が使えなくて、卒論が書け
なくなった彼は、当時付き合っていた一年下の彼女に代筆を
頼んで、見事に優論文。留年することなく卒業ができた。執念の
卒論だった。
それから卒業後、定職に就かず、二年間の浪人後、見事市役所
に合格して就職した。大学時代、ほとんど勉強をしていない彼
だったが、ここぞというときは本領を発揮するところがある。
さらに忘れられないのは、テレビ厳禁の寮生活で、彼にそそのか
されて、授業を抜け出しテレビを買いに行ったことがあった。
また結婚式にも呼んでくれた。今では年賀状の付き合いだけに
なってしまったが、本当に優しくていいやつだった。そういう人柄
に惹かれて、友達になったのだと思う。